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一流の研究者に求められる資質

一流の研究者に求められる資質

志村史夫           牧野出版           2014年7月

Book Review PIC 13

 

このシンプルなタイトルから想像できない、幅広い視野と知見が詰まった本書では、著者志村史夫氏が「一流の研究者論」を掘り下げて説きます。志村氏(名古屋工業大学のOB(修士課程修了)です!)は、日本電気中央研究所、米モンサント社セントルイス研究所で半導体結晶の研究者として従事した後、ノースカロライナ州立大学教授から静岡理工科大学教授へとキャリアパスを進んだ、グローバルな研究者です。

 

第1章 ITと感性:著者は「一流の研究者に求められる資質」の究極は、研究者の「感性」にあると強調します。多様多種かつ多量の情報を容易に提供してくれるITの恩恵は否定出来ないが、同時にそれが一流の研究者になるべく「弊害」(=思考力、想像力、判断力の退化)に繋がっているとのこと。いかに、先入観、既成概念、偏見に満ちた情報に踊らされることなく、感性を磨き、独自に思考できることが一流研究者の資質とのことです。

 

第2章 一流の研究者に求められる資質と能力:章末に、一流の研究者は人間的にもすばらしい、とあるのが印象的でした。“Ditto”。

 

第3章 師弟関係の重要性:一流が、将来の一流をinspireし、育てる傾向があるとのこと。一流の研究者になりたかったら、一流の研究者の下で学べ、とのメッセージでしょう。そうすることにより、「本物」を観察し、「本物」に触れ、自分の感性を高めることになれますね。

 

第4章 評価の評価:このチャプターは「評価」と、それに密接に関係する「平等・不平等」について論議します。人の能力は平等に造られておらず、能力により人を区別するべきであるが、差別することなく平等な機会を与えるべきであると説きます。またアメリカとは対照的に、日本で独創的研究者が育ちにくい理由は、日本教育では「みんなと違うこと」を良しとされず、他とは異なった個人の個性、能力、興味が奨励されないから。結果、画一的な人材は生まれますが、一流研究者に必要な独創的な人材が育ちにくい環境にある。このいわゆる「出る杭は打たれる」日本社会について、著者が「中途半端に出るから、周りから目障りで打たれる。(それだったら)誰にも届かず、打たれないくらいに出てしまえばいい。」と言うところは、一流の研究者になるには「信念」と「勇気」が必要なのだと納得しました。また、画期的(Breakthrough)、独創的、真に高い価値がある研究成果は正当に評価されがたく、またそれに長い時間を要するので、成果を即座に受け入れられない場合でも、「自分が尊敬する人以外の評価」は気せず諦めないこと、と将来の一流研究者達を勇気づけてくれます。

 

N.M. 2020年3月)

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