2021年7月16日
材料科学フロンティア研究院(FRIMS)構成員の浅香透准教授は、京都大学化学研究所の寺西利治教授、猿山雅亮特定助教、名桜大学の立津慶幸准教授らを中心とした研究グループと共同で、イオン性ナノ結晶の陽イオン交換反応中に起こる結晶構造変化が、ナノ結晶の形状に依存することを発見しました。陽イオン交換反応は、イオン性ナノ結晶の元素組成を容易に調整できる方法として注目されていますが、結晶構造の制御は難しいと考えられてきました。
本研究では、16種類の幅と高さをもつ六角柱型の六方晶系Cu1.8Sナノ結晶をCo2+と陽イオン交換を行い、これらの試料について網羅的に透過型電子顕微鏡で観察、測定を行いました。それにより、六角柱の高さが約10 nmを境に、結晶構造が六方晶系CoSと立方晶系Co9S8に分かれることを発見しました。さらに結晶表面の表面エネルギーの大きさがこの結晶構造変化に深く関係していることを計算科学手法によって明らかにしました。Co2+以外の陽イオンでは異なる傾向が見られ、物質固有の構造安定性がこの現象に重要な役割をもつことも分かりました。これらの知見は、温和な条件で物質中のイオンの配列を制御する技術につながると考えられます。
より詳しくはプレスリリースをご覧ください。
論文タイトル: Determinants of Crystal Structure Transformation of Ionic Nanocrystals in Cation Exchange Reactions (陽イオン交換反応におけるイオン性ナノ結晶の結晶構造変化決定因子)
著者:Zhanzhao Li, Masaki Saruyama, Toru Asaka, Yasutomi Tatetsu, and Toshiharu Teranishi
掲載誌:Science DOI:10.1126/science.abh2741
参考URL
Science
https://science.sciencemag.org/content/373/6552/332
プレスリリース(名古屋工業大学)
https://www.nitech.ac.jp/news/press/2021/9084.html